水稲における登熟性の品種間差を解析するために, 25品種の登熟歩合および精籾比重を比較した. 登熟歩合(Y)と出穂期後の積算平均気温(X)との関係は, 次の式によって表された.
Y=100-a・exp(-b・X)
常数bとX切片は品種によって異なっていた. そこで, この常数b×105を登熟係数(RI), X切片を登熟開始温度(∑Ts)とし, 登熟歩合(R)および精籾比重(S)との関係を検討した. RはRIと有意な正の相関関係を示し, Sと∑Tsとの間に有意な負の相関関係が認められた. さらに, 出穂期における茎葉中の貯蔵炭水化物量(C)と出穂期後の乾物生産量(ΔW)との和を収量内容物(C+ΔW), 総籾数(N)と精籾容積(V)との積を収量キャパシティ(NV)とし, これらとRIおよび∑Tsとの関係を検討した. (C+ΔW)/ NVはRIと有意な正の相関を示した. ∑Tsとこれらの要因との間に直接有意な相関関係はみられなかったが, Cが多い品種は∑Tsが低くなる傾向が認められた. これらより, 収量内容物/収量キャパシティ比の高い品種は登熟係数が大きいために登熟歩合が高くなり, 出穂期までに大量の貯蔵炭水化物を蓄積している品種は登熟の開始が早く, 精籾比重が大きくなると判断された.