水稲品種ヒノヒカリ,タカナリおよびアケノホシを用いて,生育時期別窒素追肥が穂・葉・茎の形態的形質および乾物生産特性等に及ぼす影響を解析した.極早期追肥(出穂約39日前),早期追肥(出穂約29日前),標準期追肥(出穂約19日前)および晩期追肥(出穂約8日前)を行った.1穂分化穎花数は早期追肥区で多く,1穂退化穎花数は標準期追肥区で少なく,その結果,1穂穎花数は早期追肥区と標準期追肥区で多かった.葉身長および葉鞘長は追肥時期に急伸長中の葉位で長くなったが,節間長は追肥時期による差異が小さく不明確であった. LAIは,極早期追肥区および早期追肥区で増加したが,全乾物重は,追肥時期による変化が比較的小さかった.茎数は極早期追肥区で増加したが,穂数は極早期追肥区,早期追肥区,標準期追肥区の間で差異は認められなかった.総籾数は早期追肥区と標準期追肥区で多かった.品種間で比較すると,追肥による1穂分化穎花数,葉身長,およびLAIの増加程度は,タカナリで最も大きかった.このことから,形態的形質の制御のためには,施肥反応の品種間差異に着目する必要があることが示唆された.