四国山地西部の山村農家から黄色種子25系統,黒色種子17系統,褐色種子2系統および緑色種子10系統からなる計54のダイズ地方品種系統を採集し,圃場で育成して生育・収量構成要因と種子形態の変異を調べた.枝分かれ分散分析の結果,これらの形質の多くに系統間で有意な差違が認められた.また開花まで日数および成熟までの諸形質と100粒重以外の収量構成要因相互間に有意な正の相関があった.100粒重と他の生育・収量構成要因との間には負の相関があり,生育と子実の充実の間にトレードオフがあることを示唆した.また,種子形状比(厚み/幅)と栽培高度との間に有意な正の相関が認められ,栽培高度が形質多様性創出の一因と成り得ることが示唆された.調べた生育・収量構成要因と種子形態について主成分分析を行い,形質の類似性と地理的分布との関係を調べたが,愛媛県広田村(旧名)の系統を除いて,明らかな関係は認められなかった.系統間の遺伝的距離と地理的距離の間には正の相関が見られる一方で,遺伝的距離の近い系統間にも大きな形質の差違が認められた.