日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
水稲糯品種栽培における穂肥窒素の施用と移植期及び品種の違いが餅の硬化性に与える影響
石崎 和彦金田 智松井 崇晃
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キーワード: , 糯米, 硬化度, 水稲, 加工適性
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2007 年 76 巻 2 号 p. 301-305

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抄録

糯米の多くは加工された後に流通することから, 加工適性が重要視される. 切り餅やあられの製造では, 餅つきから切断または包装までの時間短縮のため, 硬化性の優れた糯米, 即ち餅つき直後の生地を冷却したときに速やかに硬化する糯米が求められる. そこで, 水稲糯品種の栽培条件と加工適性の関係を明らかにする目的で, 穂肥窒素の施用と移植期及び品種の違いが餅生地の冷却後の硬さ(硬化度)に与える影響を調査した. その結果, 穂肥窒素の施用は硬化度に与える影響が小さなことが明らかであった. しかし, 穂肥窒素の施用と品種との間に交互作用が認められ, “わたぼうし”は窒素施用量の増加にともない硬化度が低下し, “こがねもち”は増大した. 一方, 移植期の早晩及び品種の違いによって硬化度に有意な差が認められ, それぞれの寄与率は6.4%及び81.0%であった. これに符合して, 移植期の15日の遅れにより硬化度が0.90 kg cm-2低下し, 品種間では“わたぼうし”が“こがねもち”よりも3.10 kg cm-2低い値を示し, 硬化度は品種の違いに大きく依存することが明らかであった. 以上のことから, 加工適性の優れた糯米を生産するためには, 品種の選択を最も重視し, さらに, 登熟気温が高まるように移植期を早めることが望ましい. また, 穂肥窒素の施用は品種によって反応が異なるものの, 移植期及び品種の違いに比べて硬化度に対して大きな影響を与えないことから, 食味を低下させない範囲内で多収を目指した栽培が可能と思われた.

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© 2007 日本作物学会
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