日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
岐阜県北部で発生したホウレンソウの葉脈間黄化症状の原因となった, 黒ボク土壌におけるマンガン欠乏
坂田 勲吉田 智彦
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2007 年 76 巻 2 号 p. 311-316

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抄録

高山市高根町留之原地区にある黒ボク土壌の圃場全面で, ホウレンソウの葉脈間がまだら状に黄化したため出荷できなくなった. 葉脈間黄化は程度の差はあるが, この地区ではしばしば起こる問題である. 原因を知るため, 同じ圃場内の葉脈間が黄化した株と, 対照として通常の緑色をした株, およびこれらの生育土壌を採取して分析した. 対照と比較して, 葉脈間が黄化した葉で最も含量が劣ったのはマンガンであり, 土壌についても同様であった. そこで葉脈間が黄化したホウレンソウに硫酸マンガン2 g L-1水溶液を葉面散布したところ, 4日後に黄化症状は消失した. また葉脈間黄化が発生した圃場における土壌の易還元性マンガンの含量は, 熔成リン肥を大量投入した同地区内の農家圃場, あるいは葉脈間黄化の発生したことのない他地区の圃場のそれよりも大幅に低かった. 一方, 易還元性マンガンの含量が30 mg kg-1以下で葉脈間黄化症状が起こりやすいことが報告されている砂質土とは異なり, 当地の黒ボク土壌においては60 mg kg-1程度でも同様の黄化が頻繁に起こる圃場がいくつかある. 以上から高山市高根町留之原地区におけるホウレンソウの葉脈間黄化の原因はマンガン欠乏であり, 欠乏症は, マンガンを強く吸着する黒ボク土壌の土性によって助長されていると考えられた.

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© 2007 日本作物学会
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