日本作物学会紀事
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栽培
2004年台風15号の潮風害による水稲被害の特徴と減収率の推定
森 静香松田 裕之柴田 康志藤井 弘志
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2008 年 77 巻 1 号 p. 13-21

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抄録

山形県庄内地域で発生した2004年台風15号の潮風害による水稲の枝梗枯れ・登熟状況を品種別に調査し, 精玄米重・品質に及ぼす影響, および減収メカニズムを検討した. 枝梗枯れ数歩合は, 1穂塩化ナトリウム量が1mgまでは塩化ナトリウム量が多いほど高くなり, 1穂塩化ナトリウム量が1mg以上では枝梗枯れ数歩合は概ね80%以上であった. 登熟歩合と整粒歩合は各品種とも枝梗枯れ数歩合が高いほど低下した. 玄米タンパク質含有率は, 枝梗枯れ数歩合が高くなると高まる傾向であった. 精玄米重は枝梗枯れ数歩合が高いほど低下し屑米重が増加する傾向で, 「ササニシキ」・「ひとめぼれ」(平年比82), 「はえぬき」(平年比66), 「コシヒカリ」(平年比54)の順であった. 精玄米重との相関係数の高い要素としては, 屑米重, 1.9mm以上粒厚歩合で、逆に低い要素はm2籾数であった. 以上より, 潮風害による精玄米重の低下のメカニズムは, 塩分が穂へ付着して枝梗枯れが発生し, 登熟歩合が低くなり屑米重が増加し, 精玄米重が低下するという一連の流れになることが確認された. また, 精玄米重と枝梗枯れ数歩合との関係から減収率の推定を試みた. 同じ枝梗枯れ数歩合でも減収率は, 「はえぬき」が「ササニシキ」・「ひとめぼれ」に比べて高くなる傾向であり関係式が2本になった. この要因としては, 台風襲来時における出穂後日数よりも登熟歩合に大きく左右された結果であると考えられた.

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