日本作物学会紀事
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栽培
浅耕栽培と施肥法または異なる作付体系の組合せがダイズシストセンチュウ(Heterodera glycines)の卵密度推移とダイズの生育に及ぼす影響
田澤 純子山本 泰由臼木 一英三浦 重典
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2008 年 77 巻 1 号 p. 33-40

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抄録

ダイズの作付拡大, 特に連作の増加に伴いダイズシストセンチュウの被害の拡大が懸念されており, 耕種的防除法の確立が望まれている. そこで, 耕起法の違い(普通耕:ロータリ耕深15cm, 浅耕:同5cm)と, 石灰窒素, 牛糞堆肥の施肥, またはダイズシストセンチュウの非宿主作物や対抗植物の導入との組合せが, ダイズシストセンチュウ卵密度推移に及ぼす影響を4年連続で調査した. 耕起法と施肥処理の組み合わせでは, ダイズシストセンチュウの卵密度は浅耕を継続した場合, 普通耕に比べ低く推移し, 土壌攪乱が少ないこととシストや卵に寄生する天敵微生物の検出率が高いことがその抑制要因として示唆された. 一方, 耕起法の違いに関わらず石灰窒素, 牛糞堆肥による密度抑制効果は明らかではなかった. 耕起法と作付体系の組み合わせでは, 耕起法より前作の影響の方が大きかったが, トウモロコシの後作ダイズでは普通耕によって卵密度が著しく増加したのに対し, 浅耕を継続した場合には低く抑えられた. またアカクローバを浅耕した跡地に浅耕で作付したダイズ収穫時の卵密度は被害許容水準を下回った. ダイズの収量は石灰窒素や牛糞堆肥の施用により増加が認められた. 以上の結果から, 継続した浅耕栽培がダイズシストセンチュウの密度抑制に効果的であり, また非宿主作物や対抗植物を前作とするときも浅耕栽培を継続することはそれらの持つ密度低減効果を増進する可能性が示唆された.

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© 2008 日本作物学会
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