日本作物学会紀事
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栽培
「種子付きマット」を用いた水稲の「箱なし育苗」に適した苗床被覆資材, 覆土量, および灌水量
白土 宏之中西 一泰鈴木 光則北川 寿岡田 謙介松崎 守夫安本 知子
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2008 年 77 巻 3 号 p. 266-272

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抄録

著者らは水稲移植栽培の省力化と軽労化のために, もみがら成型マットに水稲種子と覆土を接着した「種子付きマット」を用いて, 育苗箱を使わない「箱なし育苗」技術の開発を行っている. 本研究は箱なし育苗に適した苗床被覆資材, 覆土量および育苗開始時の灌水量を明らかにすることを目的とした. まず苗床被覆資材として防草シート, 根切りシート, 有孔ポリ, 有孔ポリ2重, ポリエチレンマルチ(以下ポリマルチ)を用い, その上にもみがら成型マットを置いて吸水特性を調べた. 吸水と水分保持は表面で滞水する透水性の低い資材が優れていた. これら資材上で箱なし育苗を行ったところ, ポリマルチで出芽勢が高く, 苗の茎葉乾物重が大きかった. ポリマルチの次に透水性が低い有孔ポリ2重ではマット外周部の苗が枯死し, 透水性が高すぎると判断された. 次にポリマルチでは過湿害の恐れもあるため, 苗床被覆資材に用いたポリマルチの小孔の有無, 覆土量300 g, 400 gおよび500 g, 育苗開始時の灌水量1.5 Lと3 Lを組み合わせて箱なし育苗を行った. 灌水量3 Lでは覆土量500 gで孔なしの場合著しい出芽不良が生じたが, 灌水量1.5 Lではいずれの区でも出芽不良が生じず, 苗の生育もよかった. 苗丈と茎葉乾物重は孔がない方がよい傾向が見られた. 孔がない場合, 覆土量は苗の生育に影響しなかった. 以上より, 箱なし育苗に適する苗床被覆資材は孔のないポリマルチで, 覆土量は300 gから400 g, 育苗開始時の灌水量は1.5 Lが適当と判断した.

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© 2008 日本作物学会
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