日本作物学会紀事
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作物生理・細胞工学
培地の窒素濃度が異なる条件で大気飽差が日本晴(日本型水稲)とIR24号(インド型水稲)の生長・乾物生産に及ぼす影響
平井 源一西岡 秀明山本 尚明奥村 俊勝稲村 達也
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2008 年 77 巻 3 号 p. 333-340

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抄録

本報告は14~17hPa(飽差大 LASD)と5~8hPa(飽差小 SASD)の大気飽差条件を設け, その各々に培地の窒素濃度条件を24.0ppm(N3区), 8.0ppm(N2区), 2.7ppm(N1区)の3水準を与え, 日本晴(日本型水稲)とIR24号(インド型水稲)の生長と乾物増加量に及ぼす飽差の影響を培地の窒素濃度に着目して解析したものである. その結果, 培地の同一の窒素濃度のもとで, 日本晴の個体当り乾物増加量を飽差間で比較すると, N2区とN1区ではLASD条件の乾物増加量がSASD条件のそれより大きく減少し, 飽差間で有意差が認められた. 一方, IR24号の個体当り乾物増加量は, 飽差間でN3区とN2区において有意差がなく, N1区においてのみ, LASD条件の乾物増加量がSASD条件のそれに比較して, 有意に減少した. これらの乾物増加量の変化に及ぼす純同化率(NAR)の寄与率は両飽差条件ともに日本晴の方がIR24号より有意に大きく, 平均葉面積(平均LA)の寄与率はIR24号の方が日本晴より有意に大きく, 乾物増加量に及ぼすNAR, 平均LAの寄与率の影響が品種間で異なった. この乾物増加量の品種間差異を植物体の窒素増加量からみると, 日本晴の窒素増加量はLASD条件では培地の窒素濃度の低下に伴い減少し, その結果NAR, 平均LAもまた減少したが, SASD条件では, LASD条件に比しNAR, 平均LAの減少の程度は小さかった. 一方, IR24号の窒素増加量は培地の窒素濃度を低くしても, 根の窒素吸収力が大きいため, 両飽差条件とも, N3区とN2区との間には差異がなく, その結果, NAR, 平均LAにおいてN3区とN2区の区間の差異は小さかった. 以上の結果が, 日本晴とIR24号の乾物増加量に品種間差異, あるいは飽差間差異が生じた要因と考える.

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© 2008 日本作物学会
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