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日本作物学会紀事
Vol. 77 (2008) No. 4 P 522

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http://doi.org/10.1626/jcs.77.522

連載ミニレビュー
  • 抄録

 過去3年余にわたり,ミニレビュー「作物形態実験法」が本誌に掲載され(オーガナイザー:前田英三先生),多くの会員から大変な好評を頂いてきました.作物学研究の開始・展開を図る上での指針や各成果を纏め上げる際の参考資料として役立つだけでなく,何よりも著者の心情・本音が吐露されていて読み手を引き込んでしまうとの大方の評価でした.この線上で新たな企画を立て新ミニレビューとして作物生理研究法をやるべしとの意見が幹事会等で集約され,レビュー委員会委員長の白岩先生から,企画小委員長を仰せ付かりました.私自身は, イネの形態形成の化学制御という側面から長年作物学研究に取り組んできた経験から,現在の作物学研究の現場に幾らかでも寄与できるのではと考え,その任を引き受けました.
 もとより,作物学に係る研究および教育は,現場に根ざしたWhole Plantサイエンスをベースにおくものであり,播種から成長・分化を経て開花・結実,収穫・ポストハーベストに至る実に長い時間軸の,かつ幅広いテーマを包含する学術分野です.そこでの成果の大半は,再び農業の現場に還元されるべきもので,そこに切り込むためには栽培学,形態学,生理学,遺伝・育種学はもとより,生態学・環境科学や分子生理・分子遺伝学等の領域をも駆使することになります.その中で,作物生理学的に研究を遂行しようと構える際に必要なツール・手法について,造詣が深い研究者に心情・本音も含めて吐露して頂くのが本ミニレビューの主旨であります.
 作物学研究に本格的に腰を落ち着けて取り組むには確かに時間がかかります.例えば,イネのライフサイクルは5~6ヶ月もあり,微生物と比べると,もう無限という位に長い.イネの開花期以降のステージの生理学研究をするには,圃場レベルでは播種後100日位は待たねばならない.それまではひたすらイネが正常に育つように肥培管理をすることになる.いきおい自分の意図に反して発芽・幼苗期イネを材料にして短期間で終了する研究に留めてしまう場合もありましょう.また,研究者によっては,シロイヌナズナ等ライフサイクルが短く扱い易い研究材料を使うこともあります.しかし,イネとシロイヌナズナとを比べると,共に高等植物で子実植物とは言うものの,単子葉種と双子葉種という大きな違いがあり,形態学的・分類学的にはイネとは遥かに縁遠い.作物学研究者が取り組んでいる各論的研究は,普遍性を意図するのでなく,それ自体を研究対象にする場合が多い.従って,たとえ時間がかかっても,それに食らいつかねばと覚悟しておられる研究者は多いと思います.それだけに,そうした研究で早く良結果を出し,素早くペーパーにすることを常々思案するものです.他にも多くの意義付けをすることができましょうが,こうした日時がかかる試験研究への良質なヒントや簡便な今日的試験法があれば,どれほど試験を有利に進められることでしょう.
 これまで30年余,私が見聞してきただけでも,作物関連の生理生態研究分野には多くの実験書・成書があります.執筆担当者にはそうした過去の事例にも触手を伸ばす余裕も持って頂きながら,気軽な気持ちで執筆していただきたい.学会員諸氏におかれては,本ミニレビューへの強力な協力と容赦のない批判を宜しくお願いいたします.

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