7月下旬の晩播,無中耕無培土栽培を前提とした水田転換畑作ダイズの省力安定多収生産技術の確立に資するため,2002~2005年の4カ年にわたり「サチユタカ」を供試して培土の有無や栽植密度が,ダイズの生育,収量,窒素固定能に及ぼす影響を検討した.サチユタカを晩播で無中耕無培土栽培した場合,収量は適期播の収量に比べ劣る傾向にあったが,年次によっては適期播と同程度の収量が得られ,条間を縮小する狭畦栽培により地上部乾物重が増加し,子実収量も増加の傾向が認められた.一方,無中耕無培土栽培では倒伏が問題となった.また,m2当たりのアセチレン還元能(窒素固定能)と地上部乾物重および子実収量との間に有意な正の相関関係が,倒伏程度との間には有意な負の相関関係が認められた.したがって,窒素固定能を高めるには地上部生育量の確保と倒伏回避の重要性が示された.以上のことから北部九州において,7月下旬以降の晩播で省力かつ安定多収生産を図るためには,生育量を確保し窒素固定能を高める狭畦栽培を実施し,かつサチユタカ以上の耐倒伏性を持った品種を導入することが重要であると考えられた.