日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
Print ISSN : 0011-1848
ISSN-L : 0011-1848
形態
ダイズ品種「エンレイ」の縮緬じわ発生種子における種皮表面微細凹凸構造の特徴
乙部 和紀大野 智史
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 78 巻 4 号 p. 492-496

詳細
抄録

ダイズ種皮にみられる縮緬じわは,品質分類上の格落ち要因である.本研究では,レーザ走査型三次元微細形状計測顕微鏡を用いて,ダイズ種皮表面の三次元微細構造の特徴を定量化し,縮緬じわ粒と正常粒での種皮微細構造上の違いを明らかにした.微細構造上の特徴として,一般的に透水性のあるダイズ種皮表面にみられる微細凹凸構造の多寡に着目し,上記顕微鏡により計測した三次元構造データから表面粗さ指標のひとつである二乗平均平方根粗さ(RMS)を求め,縮緬じわ粒と正常粒の比較を行った.その結果,子葉中央部における縮緬じわ粒のRMSは平均で0.9~1.1µmに対して,正常粒では1.4~1.6µmと,表面粗さに有意(1%水準)な違いが認められ,縮緬じわの発生は種皮表面の部分的な滑面化を伴うことが示された.加えて,滑面化した種子を用いて短時間吸水時のしわ発生様態観察を行うと共に,目視選抜した正常粒による,吸水・乾燥による縮緬じわの再現を試みた.滑面化した種子では,子葉中央部の種皮吸水を示すしわの発生頻度が滑面化していない種子に比べて有意に低く,滑面化と透水性低下との関連が示唆された.再現試験では,供試種子中の1割超に種皮表面の滑面化が認められたにもかかわらず,縮緬じわの発生は認められなかった.以上の結果から,縮緬じわの発生には種皮構造の変化に起因する透水性の違いだけでなく,種子登熟過程における他の影響が示唆された.

著者関連情報
© 2009 日本作物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top