日本作物学会紀事
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栽培
米糠施用が中国及び日本産水稲品種の収量と食味に及ぼす影響
辺 嘉賓諸隈 正裕塩津 文隆豊田 正範楠谷 彰人
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2010 年 79 巻 3 号 p. 251-261

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抄録

中国華北地域での水稲の有機栽培に関する基礎的知見を得るために,中国華北地域の水稲品種 (中国品種) と日本で育成された水稲品種 (日本品種) をそれぞれ7品種ずつ供試して,移植後の米糠施用が収量や食味に及ぼす影響について品種間で比較検討した.供試品種は,育成地域の違いに加えて,草型 (穂数型/穂重型) や収量性が異なる.試験は香川大学農学部附属農場の水田で2006年~2008年の3年間実施した.試験方法は移植翌日に水田表層に米糠を100g/m2散布する米糠栽培とし,農薬や化学肥料は使用しなかった.収量調査の結果,籾収量には年次間,品種間にそれぞれ有意な差が認められた.また総籾数は穂数型品種より穂重型品種の方が多い傾向がみられ,籾収量との間には有意な正の相関関係が認められた.また総籾数が30000粒/m2前後の場合に登熟歩合は80%程度と高く,年次にかかわらず安定した収量が得られた.慣行栽培ヒノヒカリを基準米とした食味官能検査の結果,外観,味,粘り,硬さには明確な品種間差が認められたものの,総合評価に品種間差はみられなかった.このことはタンパク質含有率や味の評価が年次により異なる傾向を示す品種がみられたことによるものと考えられた.以上から,米糠栽培では収量面では穂数型品種より穂重型品種の方が有利であるが,食味に対する品種の影響は小さいことが明らかとなった.

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