日本作物学会紀事
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品質・加工
黒ボク土におけるオオムギ精麦品質の改良
-粉状質胚乳を呈するデンプン変異形質の有用性-
塔野岡 卓司河田 尚之藤田 雅也吉岡 藤治乙部 千雅子
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2010 年 79 巻 3 号 p. 308-315

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抄録

黒ボク土など穀粒が高タンパク質化しやすい栽培環境における精麦品質の向上に有用な形質を明らかにするため,胚乳が粉状質を呈するモチ性および破砕デンプン粒変異(fractured starch granule)に関する準同質遺伝子系統を用いて,灰色低地土水田と黒ボク土畑における硝子率と精麦品質の差異を解析した.その結果,これらの準同質遺伝子系統ではタンパク質含量にかかわらず,ほぼ完全な粉状質であり,黒ボク土畑においても硝子質粒がほとんど発生しないことが明らかになった.また,モチ性および破砕デンプン粒変異の準同質遺伝子系統は,栽培土壌にかかわらず原系統よりも高白度であった.搗精時の砕粒発生は原系統と同程度かむしろ少なく,胚乳が粉状質であっても砕けやすい脆い粒質ではないことが明らかとなった.以上のことから,モチ性や破砕デンプン粒変異は,高タンパク質化の影響を受けない粉状質高白度品種の育成において有用な形質であると考えられた.また,これらの準同質遺伝子系統ではデンプン含量が減少したが,胚乳および糊粉層の細胞壁多糖であるβ–グルカンの含量が増加することが認められた.β–グルカンは,人体にとって種々の機能性を有する多糖であるため,モチ性や破砕デンプン粒変異は食用オオムギの付加価値の向上においても有用な形質であると考えられた.とくに,破砕デンプン粒変異はウルチ性の完全粉状質品種の育成に有用な形質であると考えられた.

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© 2010 日本作物学会
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