一般にダイズは,自殖率が極めて高い作物であるが,開花期前に低温に遭遇すると,花粉の形成不良による不稔が原因となり他殖率が増大する可能性が指摘されている.そこで本研究では,開花期前の低温処理が自然交雑率(他殖率)に及ぼす影響を調査した.ダイズ品種「青丸くん」の種子の子葉色は緑色であるが,子葉色が黄色の品種と交雑すると,交雑種子(F1)の子葉色は黄色になるので,これを交雑判定に利用した.開花期約1週間前の 「青丸くん」を人工気象室に入れ,8~15℃で7日間低温処理を施した.処理個体および対照個体を圃場の花粉源となるダイズのそばに設置し,自然交雑率を調査した.その結果,対照区の交雑率は0~0.18%に対して低温区では0.1~0.62%で,開花期前の低温処理は交雑率を著しく増大させた.また,花粉を媒介するミツバチの巣箱設置の効果も調査したところ,交雑率はミツバチ設置区では0.21%で非設置区の0.07%よりも高かった.本研究により,開花期前の低温がダイズの交雑率を増大させる一因であることが確かめられた.