日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
Print ISSN : 0011-1848
ISSN-L : 0011-1848
収量予測・情報処理・環境
穂揃期の生育診断による春まきコムギの子実タンパク質含有率の推定
佐藤 三佳子五十嵐 俊成櫻井 道彦奥村 正敏鈴木 和織柳原 哲司
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 80 巻 1 号 p. 90-95

詳細
抄録

春まきコムギの子実タンパク質含有率を推定するために,穂揃期の生育診断法について検討した.試験は北海道立上川農業試験場と近隣市町農家圃場で3~4か年行った.まず,成熟期の窒素吸収量,収量,子実タンパク質含有率の関係を精査した.その結果,成熟期の窒素吸収量を窒素吸収量2 g m-2水準別に区切り,各区切り毎に子実タンパク質含有率と収量との関係をみると,窒素吸収量が8 g m-2以上14 g m-2未満の範囲では両者に高い負の相関関係が認められた.次に,これら成熟期の形質と,穂揃期の草丈,展開第2葉葉色値,穂数およびそれらの積との関連を検討した.成熟期の窒素吸収量は,「穂揃期の草丈×展開第2葉葉色値」との相関が高かった(r=0.872,P\<0.01).収量は,「穂揃期の草丈×展開第2葉葉色値×穂数」との相関が高かった(r=0.826, P\<0.01).これらの結果から,子実タンパク質含有率適正化のための穂揃期の生育診断法を策定した.すなわち,穂揃期の生育から成熟期窒素吸収量と収量を推定し,そこから子実タンパク質含有率を推定する.この推定法は,収量の予測が必要なのでこれに伴う推定誤差が生じる.しかし,子実タンパク質含有率の高低を穂揃期に予測する必要がある場合や追肥要否を穂揃期に検討する場合に,圃場で簡易に使用する実用的な推定法として利用できる.

著者関連情報
© 2011 日本作物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top