日本作物学会紀事
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作物生理・細胞工学
福島県内の農家水田において栽培されたコシヒカリとひとめぼれの 玄米外観品質の高温反応の比較
藤村 恵人藤田 智博
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2012 年 81 巻 2 号 p. 207-211

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抄録

玄米外観品質の高温耐性に関する品種間差は農家の品種選定において重要な情報である.しかしながら,試験水田やポット栽培で認められた品種間差が,栽培管理の多様な農家水田においても同様に認められるとは限らない.2010年8月は気温が高い水準で持続しため,福島県内各地でコシヒカリとひとめぼれの登熟期がともに高温に遭遇し,農家水田における玄米外観品質の高温反応の品種間比較を行うことが可能と考えられた.そこで,福島県内に設けられている作柄判定圃のコシヒカリとひとめぼれについて白未熟粒(乳白粒,心白粒,背腹白粒および基部未熟粒)粒数割合を調査した.気温指標として,日平均気温と日最低気温の20日間平均値および基準温度を30℃とする日最高気温の10日間積算値を,出穂10日前から出穂15日後までの毎日を基点として算出した.白未熟粒のうち乳白粒は8.2%,背腹白粒は4.6%,基部未熟粒は1.2%,心白粒は0.01%であった.背腹白粒と基部未熟粒の粒数割合はコシヒカリの方がひとめぼれよりも有意に高く,乳白粒では品種間差は認められなかった.比較的粒数割合の高かった背腹白粒について,気温指標を用いて遭遇気温の品種間差を検討したところ,遭遇気温に品種間差は認められなかった.したがって,背腹白粒割合の品種間差は遭遇温度の差異に起因するものではないと考えられた.以上のことから,福島県内の一般農家の栽培管理下における玄米外観品質の高温耐性はコシヒカリに比べてひとめぼれの方が高いことが示された.

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© 2012 日本作物学会
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