日本作物学会紀事
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栽培
転換畑ダイズ不耕起栽培における地下水位制御システムを利用した梅雨期および梅雨明け後播種栽培
竹田 博之佐々木 良治
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2013 年 82 巻 3 号 p. 233-241

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抄録

転換畑ダイズ作における生育・収量の安定化と作期拡大を目指して,梅雨期に播種するダイズの出芽・苗立ちに対する地下水位制御システム(FOEAS)の効果を検討するとともに,同システムによる土壌水分の制御が梅雨明け後に播種するダイズの出芽・苗立ちおよび生育・収量に及ぼす影響を調査して梅雨明け後播種栽培の可能性を検討した.7月上旬に不耕起狭畦栽培方式で播種したダイズ品種サチユタカの出芽・苗立ち率は,額縁明渠のみ施工した慣行区では3カ年平均44%であったのに対してFOEASにより平均85%に向上した.7月下旬から8月上旬の播種では,播種数日前に水位を–5 cmに一時的に上げて土壌水分を高める水管理により69~87%の出芽率が得られた.しかし,播種時期が遅くなると播種から開花期までの期間や開花期から莢伸長始期までの期間が短縮し,さらに稔実莢数や粒数の減少などにより収量は低下した.7月下旬の播種では7月上旬播種のFOEAS区よりも30%程度減収すると推定されたが,同時期の慣行区に比較すると10%程度の減収であったことから,FOEASを利用したダイズの梅雨明け後播種栽培は,梅雨期における出芽不良のリスク分散や作期拡大の観点から実行可能性は十分にあると考えられた.

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© 2013 日本作物学会
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