日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
穂の握り締めによるイネ品種の脱粒性評価において調査株数の削減が評価結果に及ぼす影響
大久保 和男
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2013 年 82 巻 3 号 p. 283-288

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抄録

脱粒割合を評価指標とした穂の握り締めによるイネ品種の脱粒性評価の省力化を目的とし,以下の解析を行った.一度に握る穂数を1穂,3穂,5穂の3通りとし,4人の調査者が7品種(脱粒性は難,中,易,極易)について各50株を調査したデータを用いて,重複のない無作為抽出によって模擬的に調査株数を増減し,各条件におけるデータ抽出と脱粒割合の計算,およびその角度変換値を用いた遺伝率の計算をそれぞれ20回ずつ行い,評価結果の変動と遺伝率を用いた評価結果の再現性の変動を比較検討した.抽出データ数が減少するにつれて遺伝率は低下する傾向にあったが,一度に握る穂数が3穂では,遺伝率が1穂や5穂よりも高く,抽出データ数を25に減らしても遺伝率が0.99と極めて高かった.未供試の極難とやや難について,脱粒し難い品種の脱粒数の分布が二項分布に従うと仮定し,脱粒する確率(p)と調査株数(n)から脱粒数の頻度分布の理論値を求め,脱粒性難および中の品種における脱粒数の実測値との比較から脱粒性の評価が可能か否かを検討した.その結果,抽出データ数が25の場合,脱粒性極難とやや難は,難の品種との区別が困難であった.また,供試品種のうち,50株のデータに基づく脱粒割合が脱粒性中と易の品種の中間の値を示す品種をやや易とみなすと,抽出データ数が25の場合,やや易と易の判別は困難であった.調査株数を25株に減らして調査する方法は品種の大まかな脱粒性の評価を行う簡便法として使用すべきであると判断した.

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© 2013 日本作物学会
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