高温登熟障害発生の栽培技術的防止策として冷水灌漑の効果を検討した.移植時期の違いによる登熟期の気温条件と冷水灌漑の水口からの距離による水温条件の組み合わせが水稲コシヒカリの玄米外観品質に及ぼす影響を2ヵ年の圃場試験から検討した.乳白粒,腹白粒と背白,基白粒とでは移植時期と水口からの距離に対する発生の様相を異にし,背白,基白粒は出穂後20日間の平均気温が高いほど発生が多かった.これらの発生は,水口に近い区では低地温によって抑制される傾向にあった.また,心白,背白,基白粒の発生率と出穂前20日間の地温に有意な相関がみられ,出穂前の地温低下による根圏環境の改善が白未熟粒発生抑制に効果があることが示唆された.ポット栽培したコシヒカリを用い,冷水かん水処理を行ったところ,対照区では乳白粒の発生が14%であったのに対し,水温17℃の冷水かん水処理区では2%まで低下した.このことには,株あたりの出液速度で示される根系の生理活性の低下抑制と葉の老化抑制が関与していると考えられた.