日本作物学会紀事
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栽培
カリ施肥量の違いが多回株出しで栽培した飼料用サトウキビの生育および 養分吸収に及ぼす影響
境垣内 岳雄寺内 方克服部 太一朗石川 葉子松岡 誠田中 穣樽本 祐助寺島 義文安藤 象太郎原田 直人
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2014 年 83 巻 4 号 p. 305-313

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抄録

ミネラルバランスに留意した飼料用サトウキビの施肥方法の開発の一環として,製糖用に準じた現行の施肥方法の区 (対照区) に対して,カリ施肥量を減らした処理区 (カリ減区,無カリ区) を設け,多回株出し栽培での飼料用サトウキビの生育,養分濃度および土壌の養分含量の推移を調査し,カリ施肥量の低減の可能性を検討した.対照区と比較してカリ減区や無カリ区ではミネラルバランスの指標であるK/(Ca+Mg)当量比が低く,株出し2回目以後は施肥処理による有意差が認められた.これはカリ減肥によりK濃度が低下し,吸収の拮抗関係にあるCa,Mg濃度が増加したためであり,カリ減肥を継続することでK/(Ca+Mg)当量比の改善が可能と判断された.一方で,カリ減肥ではKの収奪が大きいため土壌の交換性Kが低く推移し,多回株出し栽培で収量の低下が認められた.また,株出し7回目に無カリ区にカリ施肥をしたところ,施肥量の増加に伴い生草収量が増加した.このため,多回株出し栽培ではカリ減肥の継続は困難であり,現行のカリ施肥量を維持すべきと言える.また,対照区でも土壌の交換性Kが低下傾向にあることから,堆肥などでKを還元することが多回株出しでの収量維持に重要と考えられた.肥料の3要素のうちNは現行の施肥量が適正であるが,Pは投入が過剰であった.対照区でも株出し栽培の継続により収量低下が認められており,その原因として土壌の交換性Ca,Mgの低下が推察されることから,苦土石灰を施用するなど3要素以外の収支への留意も必要と言えた.

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© 2014 日本作物学会
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