日本作物学会紀事
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作物生理・細胞工学
出葉転換点および幼穂形成始期により分画したイネの成長相における 感光性評価
薮田 伸箱山 晋稲福 さゆり福澤 康典川満 芳信
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2015 年 84 巻 1 号 p. 64-68

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抄録

イネの短日に対する応答,いわゆる感光性は出穂の促進として広く知られており,短日処理により出穂が促進された期間を可消栄養成長相として捉え,その大小で感光性を評価してきた.しかし,著者らの研究から感光性が存在するとされてきた可消栄養成長相の他,生殖成長相においてもその存在が示唆されたため,従来法に代えて成長相ごとの感光性を許容した成長相の分画法を考案した.すなわち基本栄養成長相を播種~出葉転換点,可消栄養成長相を出葉転換点~幼穂形成始期,幼穂形成始期~出穂を生殖成長相として求め成長相ごとの感光性について調査を行った.その結果,いずれの成長相も晩生ほど大きい傾向があり短日で短縮された.次いで各成長相の自然日長区と10時間日長区の値の差を各成長相の感光性とすると,コシヒカリを除き可消栄養成長相の感光性は他の2相よりも大きく (8.2~73.4日),自然日長区の出穂期と有意な正の相関関係 (r=0.952) があり早晩性に強く関与していることが示唆された.同様に生殖成長相の感光性も自然日長区の出穂期と正の相関関係 (r=0.801) が見られたが,0.1 (Tepi) ~9.8日 (Rayada)と品種間差異は小さかった.一方で,基本栄養成長相の感光性は早晩性と関係は見られないものの (r=0.173),ジャポニカ品種で大きい値をとった.本実験の手法で求めた各成長相の感光性は,可消栄養成長相がその大部分を担っており出穂期に対し大きな影響を及ぼしているが,他の成長相の感光性は品種ごとで特異的に異なることが示され,従来法と比べてより詳細な感光性の評価を行うことが可能となった.

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© 2015 日本作物学会
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