日本作物学会紀事
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栽培
秋田県における疎植栽培条件下での追肥の有無があきたこまちの収量,品質に及ぼす影響
松波 寿典能登屋 美咲松波 麻耶金 和裕
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2016 年 85 巻 1 号 p. 1-9

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抄録

水稲の疎植栽培は育苗箱数を低減できることから,播種および育苗作業の省力化技術として期待されている.しかし,秋田県において15.1株/m2または11.2株/m2で疎植栽培したあきたこまちは21.1株/m2で標準栽培したものに比べ,玄米タンパク質含有率が高く,食味が劣ることが示唆されている.そこで,本研究では,15.1株/m2と11.2株/m2で疎植栽培したあきたこまちへの追肥の有無が収量性や品質に及ぼす影響を明らかにし,秋田県において疎植栽培したあきたこまちの収量を確保し,低タンパク化と食味改善が両立できる栽培技術について検討した.その結果,15.1株/m2と11.2株/m2で疎植栽培したあきたこまちでは減数分裂期の無追肥により収量は年次により減収する可能性はあるものの,玄米外観品質への有意な影響は認められなかった.一方,両栽植密度区とも無追肥により主茎および全ての分げつにおいて玄米タンパク質含有率は低下する傾向がみられた.特に,無追肥区の高節位・高次位の分げつの玄米タンパク質含有率は追肥区の低節位・低次位の玄米タンパク質含有率と同程度にまで低下した.そして,11.2株/m2では無追肥により炊飯米の味と粘りの評価が向上する傾向がみられた.したがって,秋田県におけるあきたこまちの疎植栽培では標準栽培よりも減数分裂期の追肥量を減じることで,玄米タンパク質含有率は低下し,食味を改善できる可能性が示唆された.

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© 2016 日本作物学会
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