日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
寒冷地北部において疎植栽培したあきたこまちの茎数過剰に伴う低収要因
松波 寿典能登屋 美咲三浦 恒子金 和裕松波 麻耶佐藤 雄幸
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2016 年 85 巻 1 号 p. 67-76

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抄録

これまで寒冷地北部における水稲の疎植栽培で安定した収量を得るためには穂数の確保が重要であるとされてきた.しかし,茎数の発生が著しく多く,穂数が多い年次において疎植栽培したあきたこまちで低収となる現象が認められた.そこで,本研究では,15.1株/m2と11.2株/m2の栽植密度で疎植栽培したあきたこまちに関して,低収となった2012年と平年並であった2010,2011,2013年の生育特性,収量および収量構成要素,品質について比較し,寒冷地北部において疎植栽培した水稲の茎数過剰に伴う低収要因について検討した.その結果,寒冷地北部において疎植栽培したあきたこまちで,移植期以降,好天に恵まれ,苗の活着が良好となり,葉齢の進展も著しい場合,初期分げつの発生は旺盛となり,加えて,中干し期間の降水量が著しく多くなると無効分げつの抑制が不十分となり,有効分げつ決定期以降まで茎数が多く経過する.一方,草丈は短めに推移し,最高分げつ期頃から葉色が淡く経過した場合,減数分裂期の葉色は著しく低下し,2次枝梗籾数の減少に伴い一穂籾数が減少し,m2当たりの総籾数が不足することで,低収になることが明らかとなった.したがって,寒冷地北部における疎植栽培で安定多収を達成するためには,m2当たりの穂数を確保することに加え,最高分げつ期以降の葉色を適度に保ち,一穂籾数の減少を防ぐことも重要であると考えられた.

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© 2016 日本作物学会
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