日本作物学会紀事
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家畜排せつ物由来メタン発酵消化液の土壌施用によるネコブセンチュウ被害軽減効果の検証
赤木 功樗木 直也
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2017 年 86 巻 1 号 p. 41-49

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抄録

家畜排せつ物由来メタン発酵消化液の土壌施用によるネコブセンチュウ被害軽減効果を検証するために,いくつかの実験を試みた.消化液の成分分析の結果,採取1日後の消化液は殺線虫効果を持つことが報告されているアンモニア態窒素を1.86 g L–1含有することが確認された.ただし,このアンモニア態窒素は採取後の貯蔵時間の経過とともに減少していくことが示された.我が国に分布する6種のネコブセンチュウ(アレナリアネコブセンチュウ沖縄型,アレナリアネコブセンチュウ本州型,キタネコブセンチュウ,サツマイモネコブセンチュウ,ジャワネコブセンチュウ,ナンヨウネコブセンチュウ)は,消化液の5倍希釈液の浸漬処理によって,いずれのネコブセンチュウ種も90%以上の個体が不動化することが示された.また,ネコブセンチュウに汚染された砂丘未熟土への土壌1 kg当り120 mL (最大容水量60%相当) の消化液添加は,土壌中のネコブセンチュウ密度を有意に低減させることが明らかとなった.ただし,灰色低地土および黒ボク土では明確なネコブセンチュウ密度の低減効果は確認できなかった.ネコブセンチュウに汚染された砂丘未熟土への土壌1 kg当り70 mL(アンモニア態窒素200 mgを含む)の消化液施用は,根に着生する卵のうの数を対照(化学肥料施用)の25%以下にまで抑制することが示された.

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© 2017 日本作物学会
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