半矮性遺伝子をもつインド型多収水稲品種の北陸193号の早植栽培において,苗の草丈や茎葉重の減少が問題となっていることから,育苗時の保温法と,窒素追肥による苗質改善効果について検討した.ビニルハウス内で育苗する標準育苗と比較し,ハウス内で苗箱の40 cm上から無色の透明マルチをかけ,側面下部より3–4 cm隙間を空けたマルチ被覆は,苗の草丈を3.5 cm増加させ,茎葉重も同等以上となった.育苗中に水に溶かした硫安を成分量で箱あたり4 g分施すると,いずれの温度処理でも苗の草丈や茎葉重,ならびに苗の窒素含有率が高まった.苗箱をプール中に水没させるプール育苗処理では,箱上水位を2 cmとするよりも5 cmとする深水プールのほうが苗の草丈は増加した.深水プールの苗の草丈は標準育苗に比べ2.9 cm長く,苗の茎葉重にも有意な減少は認められなかった.また,深水プールと箱あたり2.5 gの追肥を組み合わせて育苗した苗を,準高冷地で機械移植し,標準育苗と比較した結果,苗の草丈と窒素含有率の増加が移植後初期の乾物生産の向上や欠株率の減少に有効であることが示唆された.