日本作物学会紀事
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総説
塩生植物の作物及び遺伝子資源としての可能性
東江 栄佐藤 稜真齋藤 和幸諸隈 正裕
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2021 年 90 巻 4 号 p. 373-381

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抄録

塩害は作物生産を低下させる大きな要因である.近年は特に人為的な塩害が問題になっている.今後,増大する世界的な食料需要を満たすためには,塩類集積土壌のような耕作不適地を含めた農地の拡大が必要である.塩生植物は海岸砂丘,塩湖岸及び内陸の塩湿地等に生育する耐塩性の高い植物であり,塩害地における新しい作物として期待される.20世紀後半から進められた体系的な研究により,塩生植物が食用,飼料,油糧,バイオ燃料,医療,及びファイトレメディエーション等に利用できることがわかってきた.耐塩性植物の塩に対する適応機構を解明することで,作物の耐塩性を向上させるための重要な知見が得られる.また,耐塩性の高い植物を活用する塩水農業は,塩類集積土壌において農業生産を行う上で有効である.本総説では,塩生植物の機能及び農業利用に関する国内外の事例を紹介し,塩生植物の遺伝子資源及び代替作物としての可能性を考察する.

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