抄録
C3型作物のイネおよびダイズとC4型作物のヒエおよびトウモロコシ幼植物の乾物生産におよぼす高濃度CO2 (300ppm 対 1000ppm)および低濃度O2 (21% 対 6%)の影響並びにそれらの相互作用を検討した. 小型環境制御装置を用いて明期処理(明期にガス濃度組合せ処理を行い,暗期は戸外の空気を通気)と暗期処理(明期処理とは逆の処理)の2種類の実験を行った. 前者は日長12時間,照度48klx,気温28/23℃,5日間であり,後者は日長12時間,照度48klx,気温26/26℃,7日間であった. その結果以下のことが分った. 1. 明期処理の場合,(1) 21%O2 (大気条件)下ではC3,C4型作物のいずれにも高濃度CO2 (1000ppm)による乾物生長速度(GR)の促進が認められたが,反応はC3型作物の方が大きかった.それはC3型作物の純同化率(NAR)の反応がC4型作物に比べて特に大きいためである. (2) C4型作物の高濃度CO2に対するGRの反応は,低濃度O2 (6%) 下と21%O2下とで殆んど変らなかった. 一方,C3型作物では高濃度CO2によるGRの促進程度が低濃度O2下では21%O2下よりも小さく,また低濃度O2と高濃度CO2とを組合せても,後者単独の条件以上の促進はみられなかった. C3型作物の場合,高濃度CO2によるNARの促進程度も低濃度O2下では21%O2下よりも小さく,これらのことは,光呼吸に対するCO2濃度とO2濃度の桔抗作用が乾物生産にも反映されたことを示している. 2. 暗期処理の場合,高濃度CO2および低濃度O2の単独またはそれらの組合せは,用いた濃度範囲では作物の生育に何ら影響を与えなかった.