日本作物学会紀事
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水稲の冷温登熟性に関する研究 : 第3報 登熟に及ぼす出穂後乾物生産の影響
楠谷 彰人
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1988 年 57 巻 2 号 p. 298-304

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抄録

これまで北海道では, 登熟の良否が水稲の収量や品質に重大な影響を及ぼしてきた。このため登熟性の向上は品種の具備すべき最重要特性のひとつとされてきた. 本報では, 登熟性の品種間差の生じる機構を明らかにし高登熟品種育成のための指標を得ようとした. 稔実籾登熟歩合(Y)と出穂期後の積算日平均気温(X)との関係は次式によく適合した. Y=1-a・exp (-b・x) 常数bに明瞭な品種間差が認められたので, この値(登熟係数)により品種の登熟能力を検定した. 登熟係数は, m2あたり籾数(N)とは有意な相関を示さなかったが, 穂揃期後2週間目における稈+葉鞘中の貯蔵炭水化物量(C), 穂揃期後2週間目から成熟期にかけての乾物生産量(ΔW)および1籾あたりの炭水化物供給量〔(C+ΔW)/N〕とは有意な正の相関を示した. 穂揃期後2週間目から成熟期にかけての穂への炭水化物移行率〔穂重増加量(ΔE)/(C+ΔW)〕と登熟係数との間にも有意な正の相関が認められたが, 炭水化物移行率の品種間差は他の登熟形質に比べて小さく, 既存の北海道品種を使って大幅な転流効率の向上を実現することは困離と予想された. これらから, 登熟係数は品種の登熟能力を評価する指標として育種的に利用可能な形質であり, その向上のためには1籾あたりの炭水化物供給量を増し, その穂への転流効率を高めることが必要と考えられた.

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