抄録
東北地方の主要品種であるキタカミコムギ, コユキコムギ, ナンフコムギの3品種を用いて収穫時期が品質に及ぼす影響を明らかにするために, 1988年から1989年に早刈と遅刈2時期, 1989年から1990年に早刈, 適期刈, 遅刈の3時期について粗蛋白含量, 灰分含量及びコムギ粉生地の物性などについて試験を行った. 分散分析の結果, 収穫時期間に有意差が認められた成分は60%粉, ストレート粉及び末粉の灰分含量, セデメンテーション・バリュー(SV), 有意差が認められなかった成分は原粒及び60%粉の粗蛋白含量, 原粒の灰分含量であった. 収穫時期が遅くなるにしたがって灰分含量が低下し, 灰分移行率が高まり, 60%粉の品質が向上した. 製粉歩留は, 収穫時期間の差異は小さかったが1%水準の有意差が認められた. 収穫時期が遅くなるにしたがって, B/M率, ミリングスコアは増加し, セモリナ生成率は低下した. ファリノグラムノ各特性値は, 収穫時期間に有意差が認められ, 収穫時期が遅くなるにしたがって生地が固くなる方向へ変化したが, エキステンソグラムの各特性値は生地がだれる方向へ変化した. アミログラムの各特性値はいずれも収穫時期間に有意差は認められなかった. 本試験の早刈, 適期刈, 遅刈の範囲内ではアミログラムの最高粘度の低下を引き起こすような遭雨の危険がなければ, 灰分含量, ミリングスコア, SVからみて遅刈が品質的に優れていると結論できる.