61 巻 (1992) 3 号 p. 401-411
ネピアグラス(Pennisetum purpureum Schumach, 品種 Merkeron)は栄養生長期にも茎の節間伸長を行う. この節間伸長と呼吸速度との関連性を検討する目的で本研究を行った. 自然状態で育てた材料における生育に伴う地上部の夜間呼吸速度の変化を調査するとともに, 矮化剤処理により茎の節間伸長を抑制した材料と無処理の材料とを比較した. 矮化剤処理区には「パクロブトラゾール」0.538%(LL-1)溶液を草高が約1mの時期に1回のみ地上部全面に噴霧した. 葉身及び稈(茎と葉鞘)の呼吸の温度係数(QSUP10)は1.94と推定された. 葉身及び稈の呼吸活性(25℃における単位乾物重, 時間当りの呼吸速度)はいずれも生育に伴って低下し, その低下は稈の方が著しかった.矮化剤処理によって稈の節間伸長が抑制されるとともに稈の呼吸活性の低下が抑制されたため, 地上部全体の呼吸活性は処理区の方が大きかった. これらの調査結果と既報の乾物重の値などを用いた一連の回帰分析により, 圃場条件下における夜間及び全日の地上部全呼吸速度に関する維持呼吸率を推定した. 無処理の材料の維持呼吸率は他の作物についての既往の値のなかの比較的小さい値に相当した. 一方, 処理区の維持呼吸率は無処理区に比べて大きかった. 以上により, ネピアグラスの茎の節間伸長とその後の老化は地上部の維持呼吸率を低下させて光合成産物の呼吸による損失を軽減する意義があると推察された.