抄録
粒大の異なるイネニ品種, BG1とコシヒカリを用いて, 出穂開花後の発育中の粒における遊離型の内生アブシジン酸 (ABA) 含量の変化を観察した. 両品種とも一粒当たり内生ABA含量およびABA濃度は, 出穂後増加し粒重増加期の中間において最大値に達し, その後減少して粒重増加が完了した時期以降は低いレベルにとどまった. 粒重増加速度および最終粒重の高い品種BG1はどの時期においても高い一粒当たりABA含量を示した. 一方, ABA濃度に関しては, 両品種に差は認められなかった. これらの結果は, 発育中の米粒内の内生ABAが同化産物の粒への蓄積に対して何らかの役割を果たし, かつ粒重増加速度の品種間差の一因となりうることを示唆する.