日本作物学会紀事
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汎用水田において耕起および不耕起栽培したコムギ, ダイズおよび水稲の根の垂直分布の解析
小柳 敦史南石 晃明土田 志郎長野間 宏
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1998 年 67 巻 1 号 p. 49-55

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抄録

転換畑や田畑輪換など水田の汎用的な利用を前提とした水田営農において不耕起栽培技術の導入が検討されている.そこで, 1994年~1995年に灰色低地土の水田転換畑の圃場に冬作コムギと夏作ダイズを耕起および不耕起栽培した.また, 1995年~1996年に泥炭土の水田圃場で冬作にコムギ, 夏作に乾田直播で水稲を耕起および不耕起栽培し, それぞれについて根系の調査を行った.各作物の生育の後期または収穫後に改良モノリス法で深さ30cmまでの土壌を採取して, 5cm角の立方体に分けて根を洗い出し, ルートスキャナーで根長を測定した.その結果, 根長密度はダイズと水稲では深さ5cmより浅い層では不耕起区で高く, それより深い層では逆に耕起区のほうが高い傾向にあった.一方, コムギについては全層において不耕起区で根長密度が低く, 特に深さ5~15cmの層で差が著しかった.これらのデータから根系全体の平均的な深さを示す根の深さ指数(RDI)を算出した結果, 水稲とダイズでは耕起区に比べて不耕起区で値が小さく不耕起栽培による浅根化がみられたが, コムギでは深さ指数に大きな違いはなく, 不耕起栽培による浅根化はみられなかった.不耕起栽培したコムギで浅根化がみられなかった理由のひとつとして, 冬期間の降水量が少なかったことが考えられる.

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