日本作物学会紀事
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ソラマメの非構造性炭水化物含有率と耐雪性との関係
福田 直子湯川 智行
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1999 年 68 巻 2 号 p. 283-288

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抄録
ソラマメの非構造性炭水化物(nonstructural carbohydrate,以下NSC)含有率と耐雪性との関係を明らかにする目的で,耐雪性が強,中,弱の3品種を用い,さらに播種期を変えることにより根雪前の生育量とNSC含有率を変化させて耐雪性との関係について検討した.また同じ3品種について積雪下でのNSC含有率と雪害程度の変化を調査した.播種期が早い場合,耐雪性中および弱品種は根雪54日の条件下でほぼ全ての個体が枯死したが,耐雪性強品種は80%程度の越冬株率を示した.3品種ともに播種期が遅いはど耐雪性が強くなり,根雪前の生育が出芽直後である場合,子葉のNSC含有率は15%以上と高かった.耐雪性強品種の子葉のNSC含有率は他の品種より高くなかったが,早い播種期では茎葉と根のNSC含有率が他の2品種よりも高かった.このことから耐雪性中,弱品種は種子栄養に依存した状態で越冬する場合に耐雪性が向上し,耐雪性の強い品種はより多くのNSCを茎葉や根に蓄積するために早い播種期においても耐雪性が強いと考えられた.積雪下で葉と茎のNSCは急激に減少し,耐雪性中および弱品種のNSC含有率は根雪36日後に葉は1%,茎は2%より低くなり,これ以後雪害枯死葉面積率が急速に増加した.これに対して耐雪性強品種のNSC含有率は2%程度高く推移し,ほとんど雪害を受けなかった.このことから積雪下で茎葉のNSC含有率が一定以上である場合に雪害を受けにくいと考えられた.
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