日本作物学会紀事
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水稲品種の乾物生産に及ぼす暗呼吸の影響 : 早晩性の異なる品種の生長効率
齊藤 邦行大中 隆史黒田 俊郎
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2000 年 69 巻 3 号 p. 385-390

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抄録

早生品種コシヒカリ, 中生品種日本晴, 晩生品種アケボノを供試し, 生長パラメータ, 暗呼吸速度を測定し, 生長効率の推移を品種間で比較した.収量はアケボノ>日本晴>コシヒカリの順に高く, 特にコシヒカリの登熟歩合が低かった.乾物総生産量も同様に晩生品種ほど高くなったが, これには葉面積指数が大きく, 生育期間が長いことが関係していた.コシヒカリの葉面積は小さかったが, 純同化率が高いことにより, 生育前半の個体群生長速度が高く推移した.個体の暗呼吸速度(Rs)は, 移植後10日頃にピークをとって以降, 生育の経過ともに低下し, 生育後半にはほぼ一定値をとった.穂のRsは出穂後約1週間以内に最大値をとり, その後急速に低下してほぼゼロに近づいたが, コシヒカリでは成熟期においても0.1mgCO2 g-1h-1程度の値を維持した.面積当たりの呼吸消費量は各品種ともに出穂期前後に最大値をとりその後急速に小さくなり, 生育全般を通じて日本晴で低く維持した.晩生品種ほど出穂期が遅くなり呼吸消費量の高い期間が持続した.生長効率(純生産量/総生産量)は生育初期には3品種ともに60%以上を維持したが, その後次第に低下して, 登熟期には日本晴>アケボノ>コシヒカリの順に高くなった.登熟期の生長効率が低下した要因として, 早生品種ほど気温が高く推移したこと, アケボノでは大きな植物体を維持するための呼吸量をより多く要したことが関係した.穂の生長効率はアケボノ>日本晴>コシヒカリの順に高くなったことから, 高温下では穂の生長に関与しない呼吸が増大することが示された.

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