日本作物学会紀事
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ブラシノステロイドの最近の研究 : -とくに植物の成長生理に関して-
遠山 益
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2000 年 69 巻 4 号 p. 453-463

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抄録

近年になってBRsに関する分子や遺伝子レベルの研究報告が多くなったが, BRが発見されて30年間の大部分は, BRの農業への応用を目指した試験研究がほとんどであった.基礎研究に裏打ちされていない応用が否定的な結果に終るのは当然というべきである.本総説は作物の成長生理に関する最近の研究を概観して, 作物学研究者のお役に立てることを目的にしたので, 植物生理レベルの広い現象, すなわち, 細胞の成長・分裂, 維管束分化, 花粉と生殖, 老化, ストレス応答, などとBRsとの相関にとどめた.BRsは従来の植物ホルモン5種とはその作用に相異があるようにみえる.すなわち, BRsは植物の成長や細胞分裂などの機能にも関係するほか, 光合成活性, ストレス耐性, 作物の増収効果など, これまでの植物ホルモンの機能を超えた作用をもつようにみえる.しかし, BRsは作物への応用価値がないという早計が生まれたのは, 試験の時期, 場所, 植物種などによって一致した結果が得られなかったからである.したがって, 上記のBRsの諸性質を基礎植物学レベルで再度詳細に追試しなければならない.これまで試験に供したBR, EBR, HBRなどはいずれも細胞内に取り込まれた後間もなく代謝されることもわかってきた.活性持続型のより安定なBRsの開発が望まれる.基礎研究の充実と開発研究とが相まってBRsに再び光のあたることを祈りたい.

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