2019 年 43 巻 3+ 号 p. 216-
2色覚には,混同色とよばれる見分けられない色の組み合せがある.一方,2色覚は,混同色であっても,比較的大きい刺激を長時間観察すると,3色覚と類似した色名応答を示す.すなわち,2色覚の色弁別特性と色名応答の間に乖離があり,2色覚の色覚特性には,まだわかっていないことがある.本研究では,2色覚が普段の生活の中で眼にする自然物の色に対して,どのような記憶色を持つのか評価した.実験には,3色覚6名,表現型の2型2色覚3名が参加した.評価した自然物は,キャベツ,バナナ,にんじん,トマトの4種類であった.実験参加者には,一辺が0.8度または8度の色パッチをグレイ背景上に呈示した.実験参加者の課題は,色パッチの色度と輝度を調整し,キャベツ,バナナ,にんじん,トマトの記憶色を再生することであった.0.8度の色パッチでは,4種類の記憶色は混同色線に沿って分布し,局在化しない傾向であったが,8度では,ある程度分離され,局在化した.また,3色覚同様に,それぞれの自然物に対し,実物の色よりも高彩度の方向に記憶色がシフトする傾向も認められた.すなわち,2色覚は,3色覚と類似した記憶色を持つことが示唆された.