【目的】生活空間は,内装や什器で彩られている.色や照明に対する心理評価には様々な知見があるが,色彩が照明に与える影響に関する知見は乏しいため,本研究では,視野内の色分布が照明の評価にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目指す.
【方法】照明条件は,照度800 lx・色温度5700K(LEDシーリングライト)である(全面白).実験は,2分間の暗順応後,視線高さ1100mmに呈示する視標の中心を注視させる.この視標の大きさ(6段階)や色の違いを色分布の違いとする.視標とその背景の一方を必ず白とし,色は赤・青・白・灰・黒の5色であり,呈示直後と5分後に,視標と照明それぞれの明るさ・色味を評価させる.被験者は正常色覚の女子学生6名である.試行回数は3回である.
【結果】色視標の明るさや色味は色の分光反射率に対応する評価が得られた.一方,照明の明るさと色味は,注視する視標の色や分布によらず変わらない.即ち,色視標呈示部分の鉛直面照度・色温度は色分布によって変化しているにも関わらず,照明の評価と相関がみられない.これは,視野内に白色が存在していることが原因と考えられる.今後は,照明条件も変数に加えて引き続き検討する.