前報において著者らは, 国内外15品種の耐倒伏性について比較検討した結果, 我国の品種は稈基部の挫折モーメントに相違がなく, コシヒカリなどの長稈品種の耐倒伏性は著しく小さいこと, 多収性長稈品種である台農67号, 台中189号はコシヒカリなどと比べて稈基部の挫折モーメントが著しく大きいので, 草丈が高く, 穂重が重く, 地上部モーメントが大きいにもかかわらず耐倒伏性が大きいことを明らかにした. 稈の挫折, 曲げに対する強度は, 稈の挫折モーメント(=断面係数×曲げ応力)および曲げ剛性(=断面2次モーメント×ヤング率)によってあらわされ, それらは稈横断面に現われる組織の大きさと稈の材質に分けて考えることができる. 台農67号, 台中189号はコシヒカリに比べて, 稈基部の第V節間の断面係数がほぼ等しいにもかかわらず稈の挫折モーメントがかなり大きいことを認めた. そこで, 15品種のなかで第V節間の断面係数にあまり相違のなかった4品種について, 稈の物理的性質の違いを明らかにするため, 第II〜第V節間の稈の挫折モーメントおよび曲げ剛性とそれらを構成する要因について比較検討を行なった. また, 節間伸長開始期にコシヒカリの個体群南側を切除し光のよく当たる条件にさらす処理を行なった結果, 耐倒伏性が大きくなり稈基部の挫折モーメントの著しい増加が認められたので, 個体群内部と最周辺部(南側)の稈の物理的性質の違いについても検討した.