交通事故後に実施される事故鑑定において、車両の衝突速度を推定することは事故状況の把握のために重要である。さらに、衝突速度は事故当事者の過失を立証する判断材料の一つにもなるため、高精度な推定結果が求められている。衝突速度を推定する一手法としてエネルギ保存則を用いる手法があり、車両の変形から衝突エネルギを算出することで衝突速度を推定している。しかしながら、防護柵への車両衝突事故では、車両と防護柵の双方に変形が生じるため、車両のみならず防護柵のエネルギ吸収量も考慮した上で衝突速度を推定する必要がある。そこで、防護柵の変形とエネルギ吸収量との相関関係を明確にすることにより、防護柵への車両衝突事故における衝突速度を高精度に推定することが可能となる。本研究では、CAE(Computer Aided Engineering)を用いた衝突解析により粘性土の地盤に設置されたガードパイプへの実車衝突試験を再現し、ガードパイプの永久変形量とエネルギ吸収量および衝突速度の相関関係を調査した。また、解析結果より衝突位置の支柱の傾斜角度とエネルギ吸収量および衝突速度には相関関係があることを確認した。そして、支柱の傾斜角度から衝突速度を推定できる可能性を確認した。