平成8年12月20日ジュネーブで開催されたWIPO外交会議において,近年の情報のデジタル化・ネットワーク化に象徴される電子時代に対応する新たな著作権条約が採択された。この条約草案が外交会議の3ヵ月前に各国政府・関係団体に提案されたが,現行ベルヌ条約にない新たな排他的権利として,一時的複製を容認した複製権,伝達権などの提案があり,特に図書館・情報関係団体から情報への自由なアクセスを抑制するものであり,新たな権利においても著作者側と利用者側のバランスをとることが必要であるとして強い反対が起こり,国際的に反論活動を行った。
本稿では,国際的な図書館関係団体であるIFLA,EBLIDA,FIDの反論活動を紹介し,新条約の我が国著作権法への影響およびその改正について,そして図書館のILL活動に代表されるドキュメント・デリバリー・システムにおける有線送信権(新公衆送信権)の権利制限の必要性について述べる。