2024 年 40 巻 3 号 p. 125-134
抄録 令和4年度に開始された新たな歯科医師臨床研修制度では,地域包括ケアシステムの理解,説明および歯科医療の役割の説明が必修項目となり,歯科訪問診療,離島やへき地における地域医療,周術期等口腔機能管理,在宅医療または入院患者への多職種支援でのチーム医療がそれぞれ選択項目として含まれた.それに先駆け,福岡歯科大学医科歯科総合病院と九州大学病院は,相互の長所を活かし,不足している項目を補完する目的で,令和元年度から双方の臨床研修プログラムの一部として「大学間連携研修カリキュラム」を導入した.本カリキュラムの内容は,相互の研修歯科医を一定期間受け入れ,福岡歯科大学医科歯科総合病院では歯科訪問診療を,九州大学病院では周術期等口腔機能管理を研修することとした.研修後のアンケート結果では,両病院での研修について関心度,理解度は良好で,自由記載ではポジティブな意見が多く寄せられた.本研修を受けた研修歯科医の研修後の進路については,福岡歯科大学医科歯科総合病院の研修歯科医は大学勤務が多く,一方で九州大学病院の研修歯科医は歯科診療所に勤務する者が多いという結果であった.結論として,本大学間連携研修カリキュラムは,地域包括ケアシステム・医科歯科連携への関心および理解を深める目的で有用であると考えられた.