口腔衛生学会雑誌
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原著
ピクノジェノール®の口腔細菌に対する抗菌効果に関する研究
渡辺 清子松下 昌史松下 祐治梅本 俊夫
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2007 年 57 巻 5 号 p. 605-612

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抄録

ピクノジェノール®は,フランス海岸松であるPinus pinasterから抽出される植物性生理活性物質であり,プロシアニジンとフラボノイドを含有する.いずれの成分もポリフェノールの一種であることから,口腔常在菌を含む10菌種に対するピクノジェノール®の抗菌効果について種々の濃度のピクノジェノール溶液を用いて検討した.供試したグラム陽性細菌に対して,Actinomyces viscosusを除くすべての細菌に対して明らかな抗菌活性が認められた.また,Streptococcus mutansに対する抗菌活性は,0.05%濃度まで有意に認められたが,Streptococcus gordoniiに対する効果は低いものであった.これらの効果は作用時間を長くすることで増強し,10分間では抗菌活性の認められない0.01%濃度処理においても60分間作用させることにより有意な細菌生存率の減少が認められた.さらに,0.01%濃度のピクノジェノール®を含む培地を用いてS. mutansおよびS. gordoniiの増殖に対する影響について検討した結果,いずれの口腔レンサ球菌の増殖も無添加コントロールと比較して抑制された.一方,グラム陰性菌に対しては,Escherichia coliおよびVeillonella parvulaを除く4菌種に対して,顕著な抗菌活性が認められた.特に,偏性嫌気性グラム陰性桿菌であるPorphyromonas gingivalisおよびPrevotella nigrescensに対する抗菌活性は,0.1%ピクノジェノール濃度においてそれぞれ93.6±2.4%,89.6±4.8%であり,その効果は0.001%まで有意に認められた(P<0.05).以上の結果から,ピクノジェノール®は,口腔常在の幅広い細菌に対しての抗菌活性を有することが明らかとなった.

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© 2007 一般社団法人 口腔衛生学会
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