口腔衛生学会雑誌
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原著
地域在住高齢者における認知機能検査と「咀嚼の複合指標」との関係について
富永 一道濱野 強土﨑 しのぶ安藤 雄一
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2017 年 67 巻 4 号 p. 276-283

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抄録

 近年,口腔保健と認知症に関する研究成果が報告されている.そうした中で本研究の目的は,咀嚼の客観的評価(グミ15秒咀嚼検査値)が低いのに,「何でも嚙める」と思っている高齢者の認知機能が,そうでない者に比べて低下している可能性について検討することである.この目的を検討するため,主観的評価(嚙める/嚙めない)と客観的評価(嚙める;グミ15秒値12分割以上/嚙めない;12分割未満)の組み合わせで構成される「咀嚼の複合指標」(4カテゴリ)を新たに考案した.また現在歯数とグミ15秒値は正の相関関係にあることから,現在歯数(嚙める;20歯以上/嚙めない;20歯未満)を客観的評価の代理変数と考え分析に使用した.島根大学医学部が開発した認知機能低下スクリーニングツールCADi(Cognitive Assessment for Dementia, iPad version)を使用して「咀嚼の複合指標」の各カテゴリの認知機能を調べた.その結果,地域在住高齢者371名(男性142名,女性229名,平均年齢71.2±2.9歳)のうち,24名(6.5%)に認知機能低下が疑われた.また,認知機能低下の疑いの有無を目的変数としたロジスティック回帰分析の結果,(主観;嚙める&客観;嚙めない)は(主観;嚙める&客観;嚙める)に比べて6.65倍,(主観;嚙める&現在歯数;嚙めない)は(主観;嚙める&現在歯数;嚙める)に比べて10.29倍認知機能低下が疑われる者が多かった.基本属性と認知機能低下関連項目を投入してもこの傾向に変化なく本研究の目的が達せられた.

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© 2017 一般社団法人 口腔衛生学会
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