口腔衛生学会雑誌
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大都市居住80歳高齢者の現在歯保有状況に関する記述疫学的研究:2012年の東京都杉並区の調査から
長田 斎椎名 惠子安藤 雄一
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2017 年 67 巻 4 号 p. 284-291

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抄録

 本研究は2012年に東京都杉並区が実施した調査結果を活用し,杉並区の80歳区民全体の現在歯保有状況を推定することを目的とした.郵送法による質問紙調査により2,265名から現在歯数の回答を得た(回答率;60.4%).回答者の一人平均現在歯数は16.43±10.53,20歯以上所有者率は47.4%で,性別による差は認められなかった.個人情報の利用同意が得られた者(1,846名)と無回答または不同意の者(1,880名)の要介護認定状況(自立と要支援・要介護の2区分),介護保険料所得段階別(4区分)の分布の比較から,回答者は比較的健康で所得の高い層に偏っている傾向が認められた.このため要介護認定状況別,介護保険料段階別の一人平均現在歯数,20歯以上所有者率を80歳区民全体の分布に応じて外挿し,全体の一人平均現在歯数,20歯以上所有者率を推計した.その結果,男女合計の推計値は,要介護認定状況からは16.5歯,47.7%,介護保険料段階からは16.5 歯,47.1%と回答者の分析結果とほぼ同じ値であった.また274名の希望者が受診した歯科診療所における口腔診査結果との比較では,一人平均現在歯数は口腔診査結果のほうが0.5歯低いが,20歯以上所有者率は0.4ポイント高い値であった.以上から本研究の分析結果は,2012年時点における80歳杉並区民の約半数が8020を達成していたことを支持するものであった.

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© 2017 一般社団法人 口腔衛生学会
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