口腔衛生学会雑誌
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報告
平成30年7月豪雨における被災地域住民に対する口腔衛生管理の啓発活動
三好 早苗松本 厚枝杉山 勝
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2019 年 69 巻 3 号 p. 143-146

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抄録

 平成30年7月豪雨において広島県竹原市では,広範囲かつ長期の断水が発生し,断水の影響を受けた地域住民の口腔衛生状態の悪化が懸念された.そこで,竹原・豊田地区地域歯科衛生士会では,被災地域住民に対して,災害時の口腔衛生管理について伝える方法を検討し,ケーブルテレビを活用した口腔衛生管理に関する啓発活動と,断水地域の小学校での歯科保健指導を行った.本稿では,その活動内容について報告する.

 ケーブルテレビを活用した災害時の口腔衛生管理に関する啓発活動では,公益社団法人日本歯科医師会が制作した動画「災害時の歯みがき方法」の放送を地域のケーブルテレビ局へ依頼し,断水が完全に復旧するまでの期間,延べ約60回放送された.さらに,断水地域の3つの小学校の児童を対象に,災害時の歯みがき方法を実習形式で指導し,総数128名の児童と34名の教職員が参加した.

 災害における断水は長期化すると口腔衛生状態の悪化だけでなく,全身の健康にも影響を与える.しかし,災害時の口腔衛生管理の重要性について一般的にはまだ浸透しておらず,歯科界からの発信と啓蒙が必要であるとされている.災害支援として,避難所だけでなく,地域全体へ向けた口腔衛生管理の啓発は重要であり,歯科衛生士はその役割を担うことができると考える.今回報告した災害時の地域歯科保健活動が今後拡がることを期待する.

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© 2019 一般社団法人 口腔衛生学会
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