2021 年 71 巻 1 号 p. 19-27
高齢者施設への訪問歯科医師が食事形態決定に関与する割合は低いことが現状である.今後歯科医師が食事形態の決定に積極的に関与するためにも,施設入居高齢者の摂食嚥下機能低下のリスクを全身と口腔の両面から簡易的にリスク評価できるスクリーニング手法を確立する必要がある.そこで,埼玉県内の特別養護老人ホーム2施設に入居する高齢者99名(平均年齢84.9歳±8.6歳)を対象に食事形態と全身の状態ならびに口腔の状態・嚥下機能を調査し,食事形態と各項目の関連性の検討を行った.「改訂水飲みテスト」「歯みがきの自立度」「義歯装着を含めた臼歯部咬合の安定」の3項目を抽出し,施設入居高齢者の摂食嚥下機能低下のリスクを簡易評価するためのスクリーニングチャートを作成し,対象者を8つのカテゴリーに分類した.カテゴリー1・2・3・5・6では常食ならびに刻み・極刻み食のみが分布していたのに対して,カテゴリー4・7・8においてはミキサー食ならびに非経口摂取の分布がみられるようになった.今回作成したチャートは対象者にとって負担の少ない3つの項目によって,全身と口腔の状態を踏まえた摂食嚥下機能低下のリスク評価を行えると考えられた.