口腔の健康状態維持のためには,口腔保健行動が重要である.本研究では,社会的学習理論で提唱されている自己効力感(Self-Efficacy: SE)に着目し,SEが歯の喪失にどのような影響を与えるかについて,建設業従事者を対象に検討した.
2009年から2018年に職域での歯科健診を受診した建設業従事者425名のうち,2009年から2013年のいずれかの時点とその5年後に歯科健診受診歴があり,除外基準に該当しない61名を分析対象とした(男性:54名,女性7名,平均53.68±6.03歳).現在歯数,喪失歯数,Simplified Oral Hygiene Index(OHI-S),Community Periodontal Index,Self-Efficacy Scale for Self-care,定期歯科受診の有無,ブラッシング回数,喫煙の有無を測定指標とし,歯科健診および問診票によってデータを収集した.
5年後の歯の喪失を従属変数とした多変量解析の結果,喪失歯数を従属変数とした場合にブラッシングのSEで有意な標準偏回帰係数が得られた.歯の喪失を防止するためには,ブラッシングに関するSEを高めることの有用性が示唆された.