口腔衛生学会雑誌
Online ISSN : 2189-7379
Print ISSN : 0023-2831
ISSN-L : 0023-2831
Streptococcus mutans AHT株の産生する菌体外sucrasesの部分精製ならびに性状に関する研究
井上 昌一江上 立子竹原 直道大杉 利幸森岡 俊夫
著者情報
ジャーナル フリー

1974 年 24 巻 1 号 p. 6-18

詳細
抄録

口腔連鎖球菌による蔗糖よりの多糖体の生合成は, 歯苔の形成ひいては齲蝕ならびに歯周疾患の発生と密接に関係することが知られている。連鎖球菌を通じて蔗糖の示すこれら疾病とのかかわり合いを明らかにし, 歯苔コントロールの有効な方法を得るための基礎として, Streptoceccus mutansの産生する菌体外sucraseの精製とその酵素学的性状について検討した。齲蝕原性S. mutans AHT株はglucosyltransrefaseならびにinvertaseを同時に菌体外に産生したが, fructosyltransferaseの産生は認められなかつた。両酵素は本菌株の構成酵素であつた。またそれぞれについて酵素の多様性・不均一性が示唆された。同菌株の培養上清の硫安塩析沈澱画分を電気泳動的等電点分画することにより, それぞれを互に含まないまでにglucosyltransferase (精製度は495倍, 回収率5.3%) およびinvertase (同210倍, 11.5%) を分離・精製した。単離された両酵素の主な酵素学的性状は次の如くであつた。glucosyltransferase: 合成多糖体; 非水溶性グルカン, 酵素反応の至適pH; 5.0, 至適温度; 37~40℃, 酵素蛋白質の等電点; 6.035, Michaelis定数; 3.79mM, 熱に対して不安定。invertase: 至適pH; 6.0, 至適温度; 45℃, Ip; 5.075, Km; 0.09mM, 熱安定性。明らかにされた両酵素の諸性状から, invertaseはglucosyltransferaseと蔗糖を競合することに よつて粘着性の非水溶性多糖体の産生を抑制し, 菌苔形成を減少させる方向で影響を及ぼすことが示唆された。杉中らのsucrase活性分別測定法を定量化するとともに, 本法を複数のsucraseが混在する試料に適用して, その有効性を確認した。

著者関連情報
© 有限責任中間法人日本口腔衛生学会
前の記事 次の記事
feedback
Top