1983 年 33 巻 1 号 p. 48-53
Streptococcus mutans NCTC 10449より誘発変異により生じたう蝕誘発能の異なる2つの変異株, mutatienal phase Iとphase III, を用いて, それら両株の2, 3の性状について検索し, S. mutansのう蝕原性発現に関与する因子について検討を行なった。
両株を50mMグルコース加Trypticase soy brothで培養し, 培養上清のpH変化とグルコース醗酵産物の比較を行なったところ, 両株とももっばら乳酸のみを産生し, 24時間で終末pH4.3に達し, 差は認められなかった。
次に両株をBrain Heart Infubion brothで培養した後, 培養上清画分と菌体画分とに分け, pH6.5の反応液中でカゼインを基質としてプロテアーゼ活性を測定した。その結果, 両株とも菌体画分にプロテアーゼ活性が認められ, phase Iの方に強い活性のあることが認められた。
次いでWarburg検圧計を用いて, 両株による牛歯質粉末の利用性を調べた。pH7.0における4時間の間の各菌体蛋白1mgに対するO2-uptake量は, phase Iの方が高い値を示した。このことから, phase Iの方が歯質利用性が高く, 歯質内増殖能の大きいことが推測された.